光と灯りを
考える

chapter

01

イントロダクション
~光と灯りの違い~

光と灯りの違い、それは簡潔に言うと、自然に生み出されたものか、人間の手によって生み出されたものか、と言うことになります。 例えば太陽による自然光は、私たちが何の手を加えることもなく当たり前のように日の出とともに現れ、日没とともに消えて行きます。 日没を迎えれば、本来ならば私たちは何の姿も見ることはできません。 我々が普段認識しているものの全てが、光を反射することで我々の目に入り、視覚的な情報として頭に入るからです。 人類が初めて手にした「灯り」は、火を起こすことで現れた炎だったのではないでしょうか。 もっとも、その灯りも、「灯り」を目的とするのみならず、暖をとったり、煮炊きするためのものでもあった訳ですが。 その炎は松明に始まり提灯や行灯と、必要な機能によって形を変えてきます。 人類の歴史の中で暖煮炊きは近世まで大きな変化をすることなくきましたが、 灯りは人類誕生の早い時期・紀元前から専用の道具を生み出し、実用されてきたそうです。 そして1879年、白熱電球の誕生によって、「灯り」は、火の炎による「灯り」から電気を使った「灯り(電灯)」へと本格的に移行していくのです。 個人的な見解では、この火の炎による「灯り」と電球によってもたらされる「灯り」には全く大きく違った側面があり、 特に炎の持つ力は、古代から神的な意味合いを持つことも多く、物理的にも心理的にも人にあたたかさをもたらし、そして時に魂のようなものを感じさせるものでもあり、何より炎の持つその独特の「ゆらぎ」にはやはり言葉にならない魔力が潜んでいるような気さえします。 現代においても、その魔力が引用されている電灯にこそ「灯り」という言葉がしっくりと馴染むのではないでしょうか。 白く煌々と照っている蛍光灯なんかは、少し無機質で「灯り」というには程遠いような。 しかし、その使われ方や、空間の文脈性を考えると、「灯り」的なものを感じる場面も多々あります。 まあ、言い出したらキリがないので、ここでは人の手によって編み出されたものを総じて「灯り」と呼ぶことにしましょう。