光と灯りを
考える

chapter

05

ヨーロッパの灯り

日本の灯りの話が続きましたので、ここでヨーロッパの灯りについても見てみましょう。日本と全く異なる文化的背景をもつヨーロッパでの光のあり方を知るのもなかなかおもしろいです。ヨーロッパの光でまず一つ特徴的と言えば、教会の光でしょうか。天井高の高い教会で降り注ぐ上部からの光は、文字通り宗教的な力を持った光といえるでしょう。 日本人が陰影を好むとすれば、西洋の人は光を好む印象が私にはありますが、しかし暮らしの中でいうと、西洋の人が明るくしたがるのかというとそうではなく、むしろ日本で最近謳われる多灯型照明のあり方や、間接照明などの概念は西洋から輸入されたものであるとも言えます。 ヨーロッパもたくさん国があるので一つひとつ見ていくとキリがないのですが、特にインテリアデザインが進んでいると言われる北欧の灯りの使い方を見てみましょう。西洋化が進む現代の日本の住宅でも取り入れられる点も多いのではないでしょうか。今では日本の伝統を生活に取り入れる方が少し敷居が高いですもんね、皮肉ながら・・。少し前から、北欧の暮らしというのは日本でも注目されているので、照明器具や家具など雑誌やインテリアショップなどでおなじみの作品も多いと思います。 そもそも、北欧はその立地的な特性からインテリアデザインという分野が非常に発展してきました。長い冬の間、日照時間の短い中で必然的に家での時間が長くなる北欧において、家の中でいかに快適に心地よく過ごせるかは人生の要。鬱蒼とした気持ちになりがちな家での時間を明るく彩るために、あの有名なマリメッコのテキスタイルや数々の照明器具、家具が生まれていったのです。 照明器具だと、PHランプなんかは日本でもあちこちで見かけるようになりました。北欧の人たちの穏やかな性格や自然を愛する姿勢は日本人と親和性が高いとも言われ、それゆえ北欧のデザインは日本でも受け入れられやすいのかもしれません。少し話が逸れてしまいましたが、北欧の灯りの話に触れる際に注目しておきたい風習があります。 例えばデンマークでは日が落ちるとともに家の中で一つずつキャンドルに火を灯して家を明るくしていく風習があります。最近注目される「ヒュッゲ」という言葉にもあるように、デンマーク人は家族や友人と、時には一人で、心がじんわりと温かくなるような時間を過ごすことを大切にしています。「何をするか」でヒュッゲが語られることはありません。大切なのは、一人ひとりが自分にとって心温まる、大切なときを過ごすこと。 キャンドルを灯していく時間は、ただ「明るさ」を得るためだけの作業ではないのだということがわかります。キャンドルを一つひとつ灯していく行為こそが、灯りのありがたさと温もりを感じる、心を満たす時間であることが伺えます。少し儀式的な意味も含まれますね。