光と灯りを
考える

chapter

04

灯り探検

-花見小路-

四条通から花見小路へ入ると、雰囲気は一転し、京都らしい町家が軒を連ねます。まさに本格的な、京都らしい趣のある風景ですね。四条通りの店舗照明は土産物が多く、内部空間を全面的に見せているのに比べて、花見小路沿いのお店は食事どころが多く、ショーケースもない、クローズな隠れ家風なのが特徴的。一見さんお断り、な雰囲気も(実際そうではないところも多いですが)、まさに京都らしいと言えるかもしれません。笑 この辺りの建物では、照明を必要なところに必要な分だけ置く、という昔ながらのやり方が夜の町家を美しく引き立てています。戸口や窓、すだれや格子などの内から漏れる光が優しく夜の花見小路を彩っているのも印象的。また戸口の奥には必ずと言っていいほど足下を照らす照明が置かれていて、奥からも柔らかな光を漏らしています。まさに内へ引き込む照明計画ですね。光を透過させたり、提灯などでぼんやりと光らせたり、間接的な光の使い方はまさに古来からの日本の光と陰に対する美学をそのまま残しているように思えます。

(左)全体を明るく照らすのではなく、要所要所に提灯や行灯風照明を置くことで、メリハリのある照明空間が出来上がっています。こちらでも行灯を使って内部に引き込む照明計画が見られます。
(右)格子を通して光が外へ溢れています。下から照らすことで、格子越しに光のグラデーションができており、とてもきれいです。

二階の店内の天井照明も、すだれを通して伝わることで光が柔らかになっています。



-白川南通-

(左)近くを流れる川の流れが古い町家の雰囲気をより一層引き立てています。水面に映ったゆらゆらとした光が、とても風情があって素敵です。
(右)この付近では、町家ばかりでなく比較的新しいコンクリート造の建物も見られますが、新しいものと昔ながらのもの、そのふたつの共存がなされていて、ある意味調和しているように見えました。昔ながらの温かい色温度の光のすぐ隣に無機質な箱のような建物から発せられる黄緑の光。新旧それぞれの光のデザインが隣接する風景も、京都らしい灯りの景色です。


祇園四条エリアでは文字通り、様々な灯りの形態を見つけることができます。ひとくちに祇園と言っても一本みちを外れるだけで、そこには違った風景が広がっていて、照明もそれに伴い多様に計画されている。 特に印象深いのは、町家の照明計画。必要以上に照明を施さないことで、逆に光が貴重でかけがえのないものとなり、窓や格子を通すことで、光が内から溢れ出ているように、あるいは漏れ出しているように見えます。灯りの大切さを改めて感じさせられます。また、戸口の奥の足下に置かれた照明が奥行きを感じさせ、内へ内へと魅き込まれるような力を感じます。灯りが明るさを生むだけでなく、人の行動を導く誘導体としての役割もさりげなく果たしています。全てが完璧な計画に基づいてデザインされているかというとそうではなく、昔からあるものを生かしながら、必要な灯りを必要な形で添える。それ自体が奥深く美しい風景を生み出しているのでしょう。祇園のまちあかりは、見れば見るほど奥深く、感慨深く、味わい深いものであると言えます。

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