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伏見
祇園四条の洗練された灯り計画も素晴らしいですが、ここでは少し中心部を離れて伏見の灯りを見てみましょう。 市内中心部の四条エリアが観光人口最大だとすれば、伏見エリアは市内で最大の居住人口を誇るエリア。 観光地としては伏見稲荷大社が有名で、その門前町として平安時代には貴族の別荘地となるなど、京都とはまた異なる文化圏として栄えてきたエリアでもあります。 同じ京都市内でも異なる背景で育まれてきた文化や風土に、灯り計画はどのように根付いているのでしょうか。 伏見区は、昔からの水田地帯でもあり、米の生産が盛ん。その米を利用した日本酒の製造で有名です。そのため、あちこちに古くから残る酒蔵が特徴的な風景となっています。昔は京都へ物資や人を運ぶ際の拠点ともなっており、宿場町や港町としても栄えていました。今ではその多くが住宅地となり、京都市の郊外として、京都市や大阪へのベッドタウンとして機能していますが、市内を歩けばその活気の名残を目にすることができます。観光中心地とは異なる、生活の中心地で灯りがどんな役割を果たしているのか、少し見てみましょう。-南浜町周辺-
-酒蔵通り-
-まとめ-
伏見の灯り環境は、祇園四条などの中心部エリアのようにお店の数が多いわけではないので、街に見られる灯りの種類や密度は少し多様性に欠ける部分もありますが、完全に計画・計算されきっていないラフさは牧歌的な美しさを醸し出しています。宿場町・港町として栄えた歴史ある風情を残す街に現代の住宅地が層として重なり、その新旧の重なりをなじませるように灯りが機能しているようにも感じられます。また、生活に身近な雰囲気を併せ持った「灯り」にはなんとなく見るひとの心をホッと落ち着かせる、おばあちゃんの家のようなやさしさと安心感を覚えますね。究極までに洗練された、伝統を守り継ぐ心を映し出す祇園の灯りと、歴史の上に緩やかに紡がれていく伏見の灯り。同じ京都市内でもこうして多様な灯りの魅力が楽しめるのは面白いですね。